ガスレビューコラム



2025.06.06
東京都江戸川区で放置容器による爆発事故
埋設されていた60年前のアセチレン容器が要因

5月27日9時半頃、東京都江戸川区東葛西5丁目で放置容器が原因とみられる爆発事故が発生した。
警視庁によると、事故は新築戸建て住宅建設の基礎工事において、トラックに搭載した掘削機で地盤強化のため杭を打ち込む掘削作業をしていた最中に、地中にあったアセチレン容器に杭打ちドリルが穴をあけ、漏れたアセチレンガスに火花が引火して起きたものと見られている。
くい打ちドリルが地中のアセチレン容器に穴をあけた
この事故で作業員や近隣住民、通行人など10人が軽傷を負ったほか、掘削機を搭載したトラックも焼け、爆風により半径約120mの住宅やコンビニエンスストアなど、周囲の約40棟に窓ガラスが割れる、空調機の室外機や外壁が損傷するなどの被害が出た。
容器には1964年の刻印が打刻
警視庁葛西署と東京消防庁は、約65人体制で現場検証を実施。
翌28日昼過ぎ、深さ約60cmの地中から掘り起こされたガスボンベは長さ約103㎝、直径約26㎝。全体的に錆びていたが、表面にアセチレンガスの表記が確認でき、警視庁はボンベの規格や成分鑑定の結果から、漏洩したのはアセチレンガスと特定。ボンベの中央部分に今回の掘削作業の際についたと見られる直径6㎝ほどの穴があったとされる。さらにその後の捜査でアセチレン容器には耐圧検査に初回合格した時期である「11-64(1964年11月)」を示す刻印があった模様だ。
因みにアセチレンは無色、無臭、可燃性の気体であり、酸素と混合して燃焼させると火炎温度が3330℃となることから、鋼材の溶接や溶断に使われている。空気と混合した際の爆発範囲が他の可燃性ガスよりも広い特長がある。
そこで、ボンベに充填する際には、多孔質物(ケイ酸カルシウム固形物)を詰め、これに溶剤としてアセトンやジメチルホルムアミドを浸潤し、アセチレンガスを加圧溶解することで安定貯蔵している。
長らく駐車場として使われてきた現場
周辺に戸建てや集合住宅が並ぶ事故現場は、長らく駐車場として使われてきた。ボンベの刻印に示された時期には町工場が立ち並んでいた模様だ。当該、容器が何時、どのような形でこの土地に埋められ、放置されたか、どのくらいのアセチレンガスが残っていたかなど、警視庁では検証を進めているところである。
なお、今回の事故について一般社団法人日本産業・医療ガス協会は本誌の取材に
「高圧ガスに係る事故が発生したことは誠に残念であり、負傷者の皆様にはお見舞いの意をお伝えしたい。高圧ガス供給事業者として、高圧ガスの製造、販売、消費等に関係する方々と改めて高圧ガスの及び高圧ガス容器の適切な取り扱い等の情報共有をすることの重要性を再認識すると共に、再発防止への取り組みを更に強化していきたい」と述べている。