ガスレビューコラム



2025.08.04
酷暑の2025年夏、熱中症対策が義務化に

産業ガス業界も対応必須
連日、厳しい暑さが続いているが、今夏は労働環境における熱中症対策が義務付けられた。
これまでどちらかというと従業員の自己管理に委ねられていた暑さ対策は、企業側にも求められるようになってきている。
増える職場での熱中症
実際、職場における熱中症による労働災害は増加傾向にあるようだ。厚労省によると2024年の労働中の熱中症は1,100人を超え、死亡事例も22年以降3年連続で年間30人を超えている。
これは労働災害による死亡者数全体の約4%に至っている。
その原因のほとんどが初期症状の放置や対応の遅れとされ、熱中症対策は予防に加え、重篤化させないことが急務となっている。
こうした状況下、厚労省は労働安全衛生法に基づく労働安全規則を一部改正、25年6月1日より、熱中症リスクが生じる作業を実施する企業に対し、職場における熱中症対策を義務付けた。
義務化対象は、気温31℃以上または暑さ指数であるWBGTが28℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えての作業が生じる職場を持つ事業者である。
ガス製造現場や充填、耐圧検査場、配送や工事も対象に
産業ガス業界では、ガス製造現場やローリー出荷設備、充填工場や容器検査場、関連機器の製造現場に加えシリンダー配送やガス設備設置工事などが当てはまる。
具体的な対応策としては、
- 熱中症の恐れがある作業者を見つけた旨を報告する体制整備
- 緊急搬送先への連絡などの手順作成
- 重篤化を防止するための処置の実施手順の周知
以上の3つである。
予防グッズを配備するだけではなく「見つける」・「判断する」・「対処する」の3つの対応で重篤化を防ぐというものになる。
産業ガス関連事業所では、数年前より塩飴やタブレット、スポーツドリンクや経口補水液などの熱中症対策飲料を配備するほか、送風ジャケットの着用やスポットクーラーの設置も進められてきた。 他にも遮熱塗料を工場の外壁や屋根に塗る、窓ガラスに遮熱フィルムを貼るなどの対策を施す事業所も増えてきている。さらに今回の改正に合わせ、熱中症予防の教育や啓発活動を一層進めるとともに、WBGT測定器の設置や冷房を効かせたクーリングシェルターの設置なども進む。
社内ルールの整備が必要
ただ、取り扱う製品によって、対策が限定される場合もある。例えば、可燃性ガスを扱う防爆エリアでは、電気駆動のスポットクーラーや送風機、熱中症アラートグッズなどが使用できないし、水素やアセチレンを扱う現場では防爆仕様のものであっても使用できない。こまめな休憩時をとるといった対策しかない。ここも、作業員個人の裁量に任せるのではなく、社内ルールの整備を徹底するなど対応が求められる。

加えて、酷暑の夏には容器の高温対策についても検討しなければならない。
充填待ちや保管容器が強い日差しに晒されていないか、保管場所に気を配る必要が出ている。