ガスレビューコラム

ロシア、中国の台頭で不確実性増すグローバルヘリウム市場

2025年の世界ヘリウム市場は、半導体需要の低迷によって供給過剰に陥るとともにロシア、中国という世界市場において小さくない生産国、消費国の台頭で不確実性が増している。
市場関係者は、今後5年余りはこの傾向が続くとみており、状況は長期化の様相を呈してきている。

ウクライナ侵攻で雲行きが変わった

世界のヘリウム市場では2023年にロシア、シベリアのヘリウム新プラントが稼働した。同プラントの稼働は、深刻な需給タイト化にあった当時、グローバルヘリウム市場の供給力を高めるものとして期待されていた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻で雲行きは変わってくる。米国は経済制裁の一環として、ロシア国内への米国製ヘリウムコンテナー(極低温の液体ヘリウムを貯蔵・運搬するために不可欠な機器)の持ち込みを禁止する。世界で最も普及している米国製コンテナーが持ち込めなくなった結果、欧米系ヘリウムサプライヤーは次々とロシアとのヘリウム引き取りを停止した。

ロシア側は、余った引き取り枠を中国の販売事業者(ディストリビューター)に斡旋、彼らは自国製コンテナーを用いてロシア産ヘリウムの引き取りを始める。2024年、中国国内のロシア産ヘリウムのシェアは40%近くに達しトップシェアとなっている。

もっとも、中国のヘリウム需要も決して好調なわけではない。ロシアからの供給分が加わり、現地のヘリウム価格は大幅に下落、ピークの1/2〜1/3程度にまで低下したと言われている。
さらに中国国内で捌ききれない分が、インド、東南アジアにも出回り、周辺地域の市況も押し下げている。

ロシア玉とそれを担ぐ中国系ディストリビューターの台頭によってヘリウムの安値競争が助長され、既存サプライヤーの収益性は大きく揺らいでいる。

バッファー機能強化する既存サプライヤー

市場のイニシアティブを失いつつある既存ヘリウムサプライヤーは、バッファー機能(備蓄、在庫調整)を強化するため動きだしている。ヘリウムは一度液化すると長期間貯蔵できず、供給過剰時には安売りに走りやすく、一転、トラブルが起こるとタイト化に陥りやすい。そこで、余剰分を備蓄しておき、市場の混乱に備えようというわけだ。古いガス田など地下岩盤層への備蓄が米国などで進められている。 全量を輸入に頼る日本は、タイト化の影響を最も受けやすい国の一つだが、備蓄に適したガス田が少ないこと、地震による漏洩リスクも高くなるなど、国内での備蓄は困難を伴う。

半導体需要回復が焦点に

冒頭記した通り、現在の状況は今後5年程度続くと予想されている。5年程度とするのは、その間に新たなヘリウム生産プロジェクトがロシア、中東で計画されているからである。新たな生産プロジェクトが始まれば、世界の供給力は増し、供給過剰状況は継続する。新たなプロジェクトが開始されなければ、その間の需要増加で需給が引き締まっていく可能性がある。ヘリウム生産はLNG随伴であり、今後のLNG生産プロジェクトの趨勢を見守っていく必要がある。

需要面での焦点は、ヘリウムの最大ユーザーである半導体産業の動向である。AI化やEV化の進展が今後の半導体生産をどう変えるかが注目される。

今は供給過剰にあるといっても、ヘリウムが希少な天然資源であり、トラブルや地政学リスクなどによって容易にタイト化に陥る危うい製品であることに変わりはない。
安定調達・安定供給への対策を怠っていると、思わぬ窮地に陥らないとも限らないのである。

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