ガスレビューコラム

需要減少で、どうなる国内特殊材料ガス生産

2025年5月26日、NF3国産メーカーの一社、三井化学の100%子会社、下関三井化学が、26年3月末でNF3生産を停止し26年度中に販売を終了すると発表した。セントラル硝子(2018年)に次ぐ国産NF3メーカーの生産撤退となり、国産メーカーは関東電化工業1社のみとなった。

これまで世界の供給拠点として機能してきた日本の特殊材料ガスは、国内生産体制を縮小してきており、将来的には海外調達に頼らざるを得ない状況も危惧されるところとなっている。

韓、台、中シフトもマザー工場として生産を維持してきた国内拠点

産業ガス事業は地産地消のビジネスである。2000年代以降、特殊材料ガス需要の中心が韓国、台湾へシフトしていくにつれ、国内の特殊材料ガスメーカーは、現地生産体制を整備してきた。ダイキン工業は、八弗化シクロブタン(C4F8)の生産を中・韓で、レゾナックは中国、台湾でも製造している。高純度アンモニアでは、レゾナックと住友精化がそれぞれ現地に精製・充填拠点を整備した。バルキーな特殊材料ガスは、安定供給と輸送コスト低減のため半導体工場のある国や地域で生産する形がとられていった。

それでも、国内生産拠点は、製品品質の担保やBCPの観点からマザー工場として運営を続けてきた。

半導体向けだけになった国内需要先

しかし、今回は日本での生産を縮小していく動きが出てきているのである。その背景には、国内での特殊材料ガス需要の縮小がある。

顕著な例が液晶TFT(薄膜トランジスタ)である。日本での液晶パネルの生産がほぼなくなったことで、TFTプロセス向け特殊材料ガスであるモノシラン、TEOS、NF3、アンモニアの需要は大幅に縮小した。液晶向けガス市場規模(エアガス、材料ガス含む)はピークの2015年113億円から2024年90億円と20%以上縮小している(ガスレビュー調べ)。

薄膜系太陽電池や発光ダイオード(LED)も、かつて世界一位の生産シェアを持ち、特殊材料ガス市場も成長が期待されたが、現在、その大半が中国にシフトしている。

今、日本に残っている消費先は、シリコン半導体向けだけである。キオクシア四日市・北上(3D-NAND型フラッシュメモリ)、マイクロンメモリジャパン東広島(DRAM)、ソニーセミコンダクタマニファクチャリング山形・大分・長崎・熊本(CMOSセンサー)、そしてJASM熊本(ファンドリー)が、主要な半導体製造拠点であり、材料ガス市場の大口ユーザーとなっている。

半導体生産に不可欠な素材産業の維持に国家レベルの対策必要に

今後の懸念は、JASM熊本やラピダス千歳、マイクロン東広島、ソニー熊本などで最先端大型半導体生産プロジェクトが進む中、国産の特殊材料ガス供給が今後も確保できるのかということである。韓国や台湾からの輸入に頼っていては、安定調達がままならないのではという見方もある。

日本の特殊材料ガスは、主に化学メーカーが生産しているが、その化学メーカーは事業収益性や国際競争力の点から、主力の化学事業そのものの見直しを迫られている。汎用化学品のバイプロで生産される特殊材料ガスが、化学品事業の見直しの中で今後も撤退や縮小に向かう可能性は大いにある。

しかし、特殊材料ガスに関わらず、化学産業で生み出される素材や材料には半導体の生産に欠かせないものも少なくない。
日本の国力を支えると期待されている半導体を今後も作り続けるためにも、その材料や素材となる化学産業の維持にも、国家レベルでの対策が必要な時代になってきている。

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